きみが見た光
「…あなた、健くんに似てきたわね」

いつの間にか頬が濡れている俺に、おばさんはそう言いながらハンカチを差し出してきた。

「え…?」

俺が意外な顔をしておばさんを見ると、彼女は優しく笑いかける。

「あの子も、あなたに会ったらきっとそう思うんじゃないかしら」

俺は…
永遠に兄貴には敵わないんだな…

そう思うと、なんか無性に可笑しくなった。

「3年くらい前のクリスマスに、あの子、突然記憶を取り戻したの。いつも座っていた駅前のベンチで、健くんに会ったって、それがきっかけになって思い出せた、って…」

奈緒の言う、
とっくに死んだ兄貴に会ったって話か…

「健くんの面影を匂わすあなたを見掛けたのかもしれないわよね。でも、あの子の言う"奇跡"を、信じるのも悪くないと思うのよ」



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