きみが見た光
携帯を充電器に差し、俺は再びベッドの上に寝転んだ。

たった今、彩夏から聞いた話で、思わず頭の中で奈緒が橘の黄色いビートルの助手席に乗り込む光景を想像している自分に気付く。

送ってもらってるのか、橘に。

優しくていい人、ねぇ…

あんなやつに守ってもらわずに、警察に行けよ、警察

どかっと寝返りをうち、横を向いて目を閉じる。

兄貴は死んだ

俺がすべきことは…?

「真白ーっ、ごはんーっ!」

一階から叫ぶ母親の声で、考えを台なしにされた俺は思わず顔をしかめて舌打ちをする。

そして頭をボリボリと掻いた後、起き上がって部屋を出た。




< 77 / 161 >

この作品をシェア

pagetop