きみが見た光
「……」

わざと迷惑そうな顔を浮かべると、それを取り繕うように、奈緒がしゃべりだした。

「みんな、事情は聞いてるでしょ? 榊くんとは、昔からの友達なのよ」

クラスの嫌な空気を追い出そうと、彼女は明るく笑いながらそう告げた。

明るく振る舞っているが、目の下にある隈は、化粧でも隠せないほど濃くなっているように見える。

窓から射す外の光の反射が弱く、ただでさえ透き通るような肌なのに、余計不健康そうに見える彼女の顔は、本当にやつれていた。

(…寝られないのか?)

それでもサクサクとHRを進める彼女の様子を、俺は目を細めて眺めていた。



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