きみが見た光
テンポよく進められたこともあり、特に滞りもなくHRが終了した。

奈緒が教室から去っていくと、チラチラと俺の顔を見ながら、再び教室がざわめき出す。

本当にヒマな奴らだな…

呆れて、つい溜息が漏れしまう。俺は、そんなたくさんの視線から逃れようと席を立とうとしたときだった。

「ちょっと、何なのよ、みんな!」

一足先に立ち上がったのは、赤い顔をした彩夏だったのだ。

「真白と付き合ってるのは、あたしなのよ?! いい加減に、真白を変な目で見るの、やめてよ!!」

俺はまた目玉が飛び出しそうになった。

何、ムキになって宣言してんだよ、あいつ…

目を閉じて、ひとつだけ小さな溜息を吐く。

「彩夏」

そんな彼女に、冷静さを取り戻した俺は静かに呼んだ。

「放っとけよ」

それだけ言うと、俺は今度こそ立ち上がり、トイレへ行こうと教室を出た。



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