きみが見た光
「この間、駅で偶然おばさんに会った」

「えっ? 母に?」

驚いた反応を見せた奈緒をよそに、俺は真っすぐ前を見据えてうなずいた。

「おばさんから、あの時の話聞いた。そんで手を付いて、謝られた」

「え… あ… そうだったの」

奈緒は口をつぐんだ。

「俺、お父さんのこと知らなくて、奈緒がそこまで傷を負ってたこと」

「いいの」

奈緒は、遮るように口を開く。

「真白くんの言う通だもの。私は逃げた。その事実は変わらないでしょ」

「……」

俺は、言葉を探していた。

逃げた奈緒をあんなに憎んでいたのに…

どうして今は…



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