きみが見た光
「なぁ、さっき後ろ乗るとき、"安心した"って顔してなかった?」

「し、してないわよ」

俺が意地悪な口調で尋ねると、奈緒は慌てて否定する。

「ホントかよ」

「…母から話を聞いたからって、真白くんが私に構うのは…。受験生なんだから、いいのに…」

「目の隈」

ついぶっきらぼうに答える、俺。

「え?」

「ストーカー、まだ解決してねぇんだろ?」

「あぁ…、うん」

奈緒は静かに返事した。

「確かに最近、夜の電話が酷くて、あまり寝られなけど…」

「出てくるとき、橘にはバレなかった? いつもあいつに車で送ってもらってるんだろ」

「あぁ、今日は用事があるっておっしゃって、先に帰られたのよ」

"橘"と聞くと、彼女の口調は微妙に変わる。

そんなにあいつは優しくて、紳士的なのか

そんなにお前の心の隙間を埋めてくれるのか

「あっそ」

質問しておいて、俺は素っ気ない返事を返す。

そんな俺の背中を見つめ、彼女はとりあえずそれ以上何も言わなかった。



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