きみが見た光
7.自転車にて
長い坂が終わり、駅前へと続く太い道路に突き当たった。俺は、そこを右折して駅方面に進んだ直後、すぐに左折して、住宅地の中に入っていった。
道路が狭いため、車の通りが少ない線路沿いに出るためだ。
平地となり、ペダルはさらに重くなる。それでも平然とそのペダルを漕ぎつづけた。
「…ねぇ、私、重くない?」
「重い」
俺が即答すると、奈緒は俺の背中をポカポカとグーで叩く。
「暴れるなっ、バランスが崩れるっ」
俺はわざと自転車をフラフラさせて、街灯の下を走らせてみる。彼女は小さな悲鳴をあげて、俺の背中をギュッとした。
「……似てる」
奈緒は俺の背中でつぶやいた。
「あ? 何か言った?」
「なんでもない」
彼女は、首を振って風の音に負けないくらいでかい声でそう答えたが、俺にはちゃんと聞こえていた。
兄貴に似てる、か…
俺の背中を抱きしめて、今あなたが何を考えているか…
俺には、ちゃんと解る。
あなたは、多分学生のころを思い出しているはずだ。
特別だった兄貴との時間を思い出しているはずだ。
道路が狭いため、車の通りが少ない線路沿いに出るためだ。
平地となり、ペダルはさらに重くなる。それでも平然とそのペダルを漕ぎつづけた。
「…ねぇ、私、重くない?」
「重い」
俺が即答すると、奈緒は俺の背中をポカポカとグーで叩く。
「暴れるなっ、バランスが崩れるっ」
俺はわざと自転車をフラフラさせて、街灯の下を走らせてみる。彼女は小さな悲鳴をあげて、俺の背中をギュッとした。
「……似てる」
奈緒は俺の背中でつぶやいた。
「あ? 何か言った?」
「なんでもない」
彼女は、首を振って風の音に負けないくらいでかい声でそう答えたが、俺にはちゃんと聞こえていた。
兄貴に似てる、か…
俺の背中を抱きしめて、今あなたが何を考えているか…
俺には、ちゃんと解る。
あなたは、多分学生のころを思い出しているはずだ。
特別だった兄貴との時間を思い出しているはずだ。