きみが見た光
俺は、愛した人が死んでしまったとしても、その人を永遠に愛し続けることがすべてだと思っていた。

そして、実際にそういう人もいるだろう。

おばさんの言葉が、頭の中を掠める。

"人は、生きている限り、生き続けなければいけないの。その長い道程の上で、死んでしまいたいほどの悲しみに暮れた後でも、ほんの一掴みの幸せを持つくらい、許されてもいいんじゃないかしら…"

それが、前に進む、ということならば、奈緒は長い眠りから覚めた今、生きて行くために幸せを探しているのだろう。

「真白くん、私ね…」

奈緒は口を開く。俺は黙って耳を傾けていた。

「誰かを好きになることが、もう怖いのよ… 楽しかった時間が、また泡のように消えてしまうのではないかって思うと、人間不振になりかけたわ」

彼女は、俺の腰に回す腕の力を強くした。

「信じてもらえないかもしれないけど、健は私がちゃんと幸せになって生きていってほしいと望んでいた。立ち直るまで、今はもがかなくちゃいけないんだって思うのよ。だから、多くの人と関わる仕事を選んだの。だけど……」

「…だけど?」

「今は… その"ひと"に怯えてる。家に帰ると得体の知れない誰かが私をなめ回すように見られてる気がして、怖い…」

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