きみが見た光
(あいつは…)

去年はあまり興味なくて、全然眼中になかった、橘…

いつもパリっとしたスーツで決めて、細く長い手足を強調させている。背が高く、長めの髪は後ろに流し、切れ長の目で生徒を睨む、そんなイメージだ。

元々、生徒には厳しくて、毅然とした態度が、生徒の間では賛否両論の教師だった。

いつも生徒に対して眉を吊り上げてるような奴が、奈緒の腰に手を回して楽しそうに笑う奴の顔を見たとき…

(腹が立ったなんて、言えねーや)

「真白くん?」

「…教えない」

「えっ、なによ、それ」

奈緒は眉をひそめ、俺は口を真一文字にした。

それでも、あいつがお前を幸せにしてくれると信じてるなら……

(俺は、こいつの何なんだろうな…)

自分の考えに、ふと疑問を抱き、笑う。

「…なに笑ってるの?」

「別に」

もぉー、と漏らす、奈緒の不満そうな声。背中を通じて俺の耳に届く。

兄貴はいつも、こんな風に会話をしていたのかな。あのバイクの後ろに奈緒を乗せて…

いや、バイクに乗ったら会話なんてできねぇか

こんな風に奈緒と話をできるのは

(ママチャリの特権か?)

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