きみが見た光
朝は、雨のせいで胸が締め付けられそうになるくらい無性に寂しさを感じていたのに、今では空に星が出ていて、そんな気持ちを一掃させる。

心が救われていたのだ。

あんなに憎んでいたのに、今度は彼女のそばにいるだけでこんなに心が落ち着いている自分がいる。

俺は、おかしくなったのか?

それとも、もう憎まなくてもよくなったから、心の負担がなくなったからなのか?

"憎む"という感情が、どれだけヒトの体力を消耗するか、俺の体は知っている。

そして、"隠す"という感情も……

好きなのに、そんな気持ちを隠して過ごしていたあの日々をふと思い出し、俺はつい苦笑いを浮かべた。

今ならば、こんなに近くにいるのに…

でも、俺は今でもその感情を隠さなければならない。

なぜなら、解らないからだ。

なぜこんな風にして彼女を守ろうとしているのか、解らないからだ。



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