きみが見た光
彼女のナビでたどり着いたのは、高校から3つ離れた駅の近くの小さなマンションだった。

さすがに汗をかいて、体力を奪われていた俺は、ぜぃはぁと肩で息をしていた。

そしてくるりと自転車の方向を変えて、走り出そうとすると…

「待って!」

俺の背中の部分のシャツを手で引っ張り、彼女は俺を制止した。

「…お茶でも飲んでいけば」

彼女の口調に、俺はペダルを漕ごうとする脚の力を抜いた。

「…お、お願い」

俺のシャツを掴む力が強くなる。振り向けば、きっとひとりになる恐怖を思い出し、震える手を必死に抑えているんだろう。

「…ん」

俺は小さく返事をすると、自転車を停めて鍵をかけた。そして、白いタイルの外壁のマンションに入っていく彼女の後ろを付いて行った。



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