『霊魔伝』其の弐 火の章
零次朗には、ひとつだけ誰にも言えない秘密があった。
それは、他の人には見えない物が見えるということだった。
いや、見えるだけではない、話もできるのだ。
気がついたときには、それが普通だったので、誰にでもできることだと思っていた。
しかしある時、彩花には見えないことがわかったので、それ以来隠すようになった。
だが、零次朗にだけ見えるその存在は、零次朗に多くのことを教えてくれた。
その存在は、至るところに現れた。
例えば、目の前を猫が横切ったり、鳥が飛んでいたり、蝶が舞っていたりとかと同じように、現れたり消えたりした。
中でも人に近い形のものは、話しかけてきたりした。いわゆる幽霊とは違うようだった。
一緒に遊んだり、話をしたり、零次朗を時には叱ったりもした。
中でも零次朗が小太郎と名付けた尻尾のある少年とは、いつも一緒だった。
そんな小早川零次朗に、大きな転機が訪れたのは十五歳の時だった。
いきなり零次朗の祖父という人物が現れ、零次朗を引き取りたいというのだ。
生まれて間もなく行方不明になっていた孫を捜しており、ようやく見つけたという。
本当の兄と妹と信じて育てられてきた彩花は、真実を知って愕然とした。
零次朗と自分は赤の他人だったのだ。
そして零次朗は家を出ていく。
彩花にはそれが理解しがたい辛い現実だった。
しかし、零次朗は彩花に伝えた。
永遠の別れではない。
逢いたいときにはいつでも逢える。
俺たち二人の絆が消えてしまうわけではない。
ただ少しの間、逢えないかも知れない。
でも必ず戻ってくるからと。
別れを惜しみながらも、零次朗は家を後にした。
それは、他の人には見えない物が見えるということだった。
いや、見えるだけではない、話もできるのだ。
気がついたときには、それが普通だったので、誰にでもできることだと思っていた。
しかしある時、彩花には見えないことがわかったので、それ以来隠すようになった。
だが、零次朗にだけ見えるその存在は、零次朗に多くのことを教えてくれた。
その存在は、至るところに現れた。
例えば、目の前を猫が横切ったり、鳥が飛んでいたり、蝶が舞っていたりとかと同じように、現れたり消えたりした。
中でも人に近い形のものは、話しかけてきたりした。いわゆる幽霊とは違うようだった。
一緒に遊んだり、話をしたり、零次朗を時には叱ったりもした。
中でも零次朗が小太郎と名付けた尻尾のある少年とは、いつも一緒だった。
そんな小早川零次朗に、大きな転機が訪れたのは十五歳の時だった。
いきなり零次朗の祖父という人物が現れ、零次朗を引き取りたいというのだ。
生まれて間もなく行方不明になっていた孫を捜しており、ようやく見つけたという。
本当の兄と妹と信じて育てられてきた彩花は、真実を知って愕然とした。
零次朗と自分は赤の他人だったのだ。
そして零次朗は家を出ていく。
彩花にはそれが理解しがたい辛い現実だった。
しかし、零次朗は彩花に伝えた。
永遠の別れではない。
逢いたいときにはいつでも逢える。
俺たち二人の絆が消えてしまうわけではない。
ただ少しの間、逢えないかも知れない。
でも必ず戻ってくるからと。
別れを惜しみながらも、零次朗は家を後にした。