『霊魔伝』其の弐 火の章
「そうか、見えるのか。おまえが見ているものは、この中のどれじゃ。」

かなり傷んでいる書物を大事そうに出した。

表紙らしい最初に霊魔列伝とある。
それを受け取って、零次朗は目を通した。

人に近い姿を持ちながら何処か違う生き物や、いわゆる妖怪とか物の怪の類が描
かれてあった。

「じいちゃん。ここに出てくるものは、半分位知ってるよ。昔見たのもいるし、今この部屋にもいるよ。」

「そうか、それで怖いとか気持ち悪いとかは無いか。」

「別に平気さ。ずっと見てきたし、話をすれば悪い奴等じゃないってわかったし。それに小さい頃は一緒によく遊んだよ。中には悪戯なのもいるけど。あまり悪さする奴は、怒ると居なくなったし。」

「そうか、おまえの能力はかなりのものかも知れんな。おまえの父親も相当なものじゃったが。

この特殊な能力は、訓練すれば成長していく。今は見えるだけだが、訓練すれば、そのものたちを自由に使えるようになる。

そのものたちは、霊魔と呼ばれており、この自然の中のエネルギーが具現化したものなのだ。

そして霊魔たちは自分の意志を持っている。その霊魔には陰の力を持つ黒い霊魔、陽の力を持つ白い霊魔の二種類いることがわかっている。

古来、日本の陰陽師たちが使っていた式神もこの霊魔のことじゃ。霊魔には位があって、零次朗よ、おまえの能力が上がればより上位の霊魔を使えるようになるはずじゃ。

明日からはその訓練を始める。」

「何故、訓練をするんだ。そんな霊魔とかなんか使えなくとも良い。俺は前の生活に戻りたい。」
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