『霊魔伝』其の弐 火の章
次の日の朝早く、零次朗は海辺に出ていた。
「ここで、俺は生まれたのか。覚えていないけど、懐かしい気がするな。小太郎、おまえはいつから俺と一緒にいるんだっけ。気がついたら、傍にいたよな。」
《零次朗が生まれる前、おまえが母親の中にいる頃から、おまえを知っている。》
「えっ、初めて聞くぞ、その話。いったいどういうことだよ。」
《おまえの母親の佐緒里から、頼まれたから。佐緒里はおまえのことすごく心配していた。そして、ずっと零次朗を守ってくれと頼まれた。俺は約束した。ずっと零次朗を守ると。》
「俺の母さんは、佐緒里というのか。何故教えてくれなかった。」
《それは、佐緒里との約束のひとつ。零次朗がこの村に来るまでは何も言うなと言われた。佐緒里は、零次朗を一族の宿命から、守ろうとした。だから、おまえを一族から、離すため八幡の神様に託した。佐緒里は、いつも言っていた。零次朗が一族を救ってくれると。おまえの力、とても強い。だから、一族の掟に縛られるより、普通の生活の方が役に立つと考えた。》
「それで、俺の母さんは何処にいる。知っているんだろう。」
《知っている。おまえを一族から離したことで、罰を受けた。それを助けようとしたおまえの父親は、霊魔に取り憑かれた。とても強い霊魔。それが原因で父親の魂は、陰の世界に封じ込められることになった。佐緒里は、その魂を救いに陰の世界へ入ったまま、消息を絶った。ただ、二人の身体は何処かで保護されている。》
「父さんの名前は、なんて言うんだ。知っているんだろう。」
《父親の名は言えない。魂が陰の世界にいる間は、名前を失っている。人の名前とは、魂の名前だから。》
「どうすれば、その魂を助けられるんだ。」
《それは、佐緒里がしたのと同じように、陰の世界へ行って、連れ戻すしかない。でも、今の零次朗には無理。》
「じゃあ、どうしたら良いんだ。せっかく母さんや父さんのことわかったのに。」
《修行するしかない。俺に言えるのは、それだけ。》
しばらく海を見つめていた零次朗は、家に戻った。
「ここで、俺は生まれたのか。覚えていないけど、懐かしい気がするな。小太郎、おまえはいつから俺と一緒にいるんだっけ。気がついたら、傍にいたよな。」
《零次朗が生まれる前、おまえが母親の中にいる頃から、おまえを知っている。》
「えっ、初めて聞くぞ、その話。いったいどういうことだよ。」
《おまえの母親の佐緒里から、頼まれたから。佐緒里はおまえのことすごく心配していた。そして、ずっと零次朗を守ってくれと頼まれた。俺は約束した。ずっと零次朗を守ると。》
「俺の母さんは、佐緒里というのか。何故教えてくれなかった。」
《それは、佐緒里との約束のひとつ。零次朗がこの村に来るまでは何も言うなと言われた。佐緒里は、零次朗を一族の宿命から、守ろうとした。だから、おまえを一族から、離すため八幡の神様に託した。佐緒里は、いつも言っていた。零次朗が一族を救ってくれると。おまえの力、とても強い。だから、一族の掟に縛られるより、普通の生活の方が役に立つと考えた。》
「それで、俺の母さんは何処にいる。知っているんだろう。」
《知っている。おまえを一族から離したことで、罰を受けた。それを助けようとしたおまえの父親は、霊魔に取り憑かれた。とても強い霊魔。それが原因で父親の魂は、陰の世界に封じ込められることになった。佐緒里は、その魂を救いに陰の世界へ入ったまま、消息を絶った。ただ、二人の身体は何処かで保護されている。》
「父さんの名前は、なんて言うんだ。知っているんだろう。」
《父親の名は言えない。魂が陰の世界にいる間は、名前を失っている。人の名前とは、魂の名前だから。》
「どうすれば、その魂を助けられるんだ。」
《それは、佐緒里がしたのと同じように、陰の世界へ行って、連れ戻すしかない。でも、今の零次朗には無理。》
「じゃあ、どうしたら良いんだ。せっかく母さんや父さんのことわかったのに。」
《修行するしかない。俺に言えるのは、それだけ。》
しばらく海を見つめていた零次朗は、家に戻った。