『霊魔伝』其の弐 火の章
武寅が玄関で零次朗の帰りを待っていた。

「零次朗、知ってしまったようじゃな。顔を見ればわかる。じゃが、今は耐えてくれ。それにおまえを連れ戻したのも、おまえならあの二人を助けられるのではないかと思ったからじゃ。」

「じいちゃん、教えてくれ。俺はどうしたらいいのか。今すぐ助けに生きたい。だけど、どうしたらいいのか、わからない。」

「わしにも、ある能力がある。それは、陰の世界を開く力じゃ。入り口を開き、佐緒里を連れて行ったのはわしじゃ。もちろん、おまえも連れて行くことができる。しかし、それ以外は何の力もない。佐緒里の行方がわからなくなってから、何度と無く向こうへ探しに行った。じゃが、わしの力ではどうにもならんかった。それに陰の世界に行けば、想像を超えた事が起こる。陰の世界へ行くには、それ相応の準備がいるんじゃ。」

「母さんや父さんは、今何処に・・・。」

「身体はこの村のある場所にある。しかし、二人とも魂を失っていて、人の身体を欲しがる霊魔たちから守らなければならないので、結界を張って隔離してある。」

「じゃあ、母さんや父さんに会えるのはいつになるの。」

「それは、おまえが修行をして、わしと一緒に陰の世界へ行き、二人の魂を解放してからのことじゃ。」

「じいちゃん、何でも言ってくれ。どんな修行でも耐える。今すぐ俺を鍛えてくれ。」

「焦るでない、零次朗。しかし、覚悟はできているようじゃな。ならば、裏山にある修験場に案内しよう。」
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