『霊魔伝』其の参 土の章
其の参 土の章
零次朗はベッドの中で考えていた。

この村に来て一ヶ月。

例の結界での修行は、零次朗には数時間の感覚だったが、こちらの世界に戻ってくると、二週間が過ぎていた。

その後も、修行という名目で、いろいろやらされた。

それが二週間。

不思議なことに、その間武寅以外の人と接することは全くなかった。

しかし、数多くの霊魔とは出会った。

それにしても、様々なことがあった。

高校に入るや妙な事件に巻き込まれ、そのすぐ後には祖父という人物が現れ、それまで家族だと思っていた香織や彩花と引き裂かれてしまった。

そして辺鄙な村に連れられてきた。

生まれ故郷だというその村のどこかに、本当の両親がいるらしい。

また修行ということで、霊魔の世界に行けば、そこでも事件に巻き込まれてしまった。

思わずため息をついた零次朗の心を見透かしたのか、小太郎が言った。

《零次朗、俺はいつでもそばにいて、助けてやる。零次朗はこれから、もっと大変なことに出会うだろう。それを思い悩んでも仕方ないぞ》

「そうだけど、心の整理ができないんだ。彩花のこと、本当の両親のこと。それにあの邪悪な奴等のことも。正直もっと強い人間になりたい」

《零次朗は強い。只それに気がついていないだけ。普通の人間なら、あれだけの出来事には耐えられないぞ》

「小太郎、俺は普通の人間でいたかった」
零次朗は起きあがりながら、呟いた。

《宿命を背負っているのだから、どうしようもない。人でも霊魔でも、皆何かしらの宿命を持って生きている》

「そうだな。ありがとう、小太郎。少しは元気がでたよ」
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