超短編 『夢』
目が覚めた?
寝過ごした。

朝食を食べている時間はない。

とにかく出社しなければならない。

今日は朝から社長出席の企画会議があり、真っ先に企画の説明をしなければならない。

遅刻などしたら、出世どころか左遷されてしまうかも知れない。

着替えもそこそこに部屋を出た。エレベーターに乗ろうと思ったが、高層マンションなのに小さなエレベーターが二台しか無く、それも朝は上の階の住人で満員のことが多い。

時計を見たら、悠長に待っている時間はない。


階段だ。階段で降りよう。

四階だから大したことはない。

階段に向かい、そして二段とばしで駆け下りた。

最後の踊り場を回った瞬間、足がもつれた。


あっ。途端に自分の身体が宙に浮くのを感じた。


やばい。



やっちまった。

頭が下になり、階段がゆっくりと近づいてくる。


死ぬかも知れない。
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