超短編 『夢』
目が覚めた。

ベッドから落ちたようだ。

落ちたときに、夕べ飲んだ焼酎の瓶に顔をぶつけた。

右目の下が痛い。

イヤ、それどころじゃない。

寝過ごした。朝いちで会議がある。

昨日しくじった言い訳をしなくちゃいけない。

遅刻などしたら、言い訳もできない。

着替えて、顔も洗わず家を飛び出した。

駅まで走る。

小雨が振っていたが、傘など差している余裕はない。

しかし、濡れたアスファルトに革靴は滑る。


特に鉄のマンホールのフタなどは。

と思った瞬間、数歩先にその鉄のフタがあった。

踏んではいけないと思う時に限って、足が言うことを聞かない。


勢いも止まらない。


やっぱりだ。

鉄は良く滑る。


視界に曇り空が入った。


生まれて初めてのバック転をしているようだ。

と、濡れた道路が逆さまに見えたとき、後頭部に強い衝撃を受けた。


痛てぇ。
< 3 / 5 >

この作品をシェア

pagetop