おしえてください、先生。

南の家へはバスを使う。

南も同じバスに乗るはずだから、一緒に乗れば良いかと考えていた。

南に連絡しようとして、南の連絡先を知らないことに気づく。



聞いておくんだった……。

まあ、停留所近くて待ってたら会えるだろ。



そのくらいの軽い気持ちで停留所に向かって歩いていた時だった。



「あげてない……!」



南の声がして、周囲を見渡した。

南は普段、声を荒げることなんて無い。

控えめな声を出す。

こんなに大きな南の声を、俺は初めて聞いた。

まるで、怒っているかのような声だった。



声がしたクリスマスツリーの方に走る。

目に入ったのは、学ランを着た短髪の男に腕を掴まれて怯えている南。

カッと、身体に熱が走った。

俺はとっさに、南の腕を掴む男の手首を掴む。

ギリッと力を込めた。



「何してんだよ」

「いでっ、いでででっ」



男はすぐに南の腕を解放した。

南を背に隠すように前へ出る。

< 103 / 154 >

この作品をシェア

pagetop