おしえてください、先生。
南の家へはバスを使う。
南も同じバスに乗るはずだから、一緒に乗れば良いかと考えていた。
南に連絡しようとして、南の連絡先を知らないことに気づく。
聞いておくんだった……。
まあ、停留所近くて待ってたら会えるだろ。
そのくらいの軽い気持ちで停留所に向かって歩いていた時だった。
「あげてない……!」
南の声がして、周囲を見渡した。
南は普段、声を荒げることなんて無い。
控えめな声を出す。
こんなに大きな南の声を、俺は初めて聞いた。
まるで、怒っているかのような声だった。
声がしたクリスマスツリーの方に走る。
目に入ったのは、学ランを着た短髪の男に腕を掴まれて怯えている南。
カッと、身体に熱が走った。
俺はとっさに、南の腕を掴む男の手首を掴む。
ギリッと力を込めた。
「何してんだよ」
「いでっ、いでででっ」
男はすぐに南の腕を解放した。
南を背に隠すように前へ出る。