おしえてください、先生。
南の顔を見たいけど、南は下を向いていて見えない。
南の家の最寄りのバス停で降りる。
バスの中でも繋いでいた手はそのまま、マンションに向かって歩き出す。
俺、最低だ。
こんな……男嫌いだって、苦手だってわかってる相手にキスするとか、ありえねえ。
クソ男だ。
「あ、あのっ」
忘れてほしい。
俺に惚れるな、とか言ったくせに。勝手に好きになって。
「先生っ」
南にとって、大切な時期なのに。生徒にキスするとか、最低だ。
俺、家庭教師向いてねえよ。でも、やめたくない。
南に教えるのは、俺でありたい。
男をおしえるのも、勉強を教えるのも、全部が俺でありたい。
いつからこんな風に思うようになったんだ?
俺……こんなにも南のことが好きになってたんだな……。
「先生は……お母さんのことが、好きなんですよね……?」
「……え、はあ?!」
好きだと思っている南の口から桜さんのことが好きだという言葉が出てきて、驚かざるをえなかった。