おしえてください、先生。

「お母さんのことが好きなのに、どうして……どうして。おしえてください、先生……」



消え入りそうな、泣きそうな声だった。



「ちょっと待て、南。お母さんって、桜さん?」

「それ以外、誰がいるの……」

「俺が?桜さんのことを?好き?」



南が頷く。

何で俺が桜さんのこと好きってことになってんだよ。

いや、もちろん人としては好きだけど……。



「なんでそんなことになってんだよ……」

「だって……」



覚悟を決める。



「俺が好きなの、南なんだけど」



俺のものだとか言って、キスまでした。

それなのに気持ちをごまかしたりしたら、ダサすぎる。



「へ?」

「俺が好きなのは桜さんじゃなくて南だから。好きじゃない相手にキスするほど、俺も腐っちゃいねえよ」

「でも、だって、あのとき……」



南は混乱しているみたいだったけど、そう思った理由を説明してくれた。

あの日の桜さんとの会話を聞いたのはわかったけど……どこをどう聞いたらそうなったんだよ……。

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