おしえてください、先生。
「さて……。始めるか……」
「は、はい……っ」
心臓が嫌な音を立て始める。
雄悟先生の纏う空気が暗い。
どうしよう……怒られるのかな……怖い……。
「(2)、だな……で、なんだっけ? ここが2だから、答えは2だって?」
「え、あ、えっと……わ、わかんなくて……」
「ならさっきの考えは全部捨てろ。根拠のない答えはいらねぇんだよ」
数学では特にな、と雄悟先生は吐き捨てる。
『根拠のない答えはいらねぇ』
ここまで言われたのは、正直初めてだった。
今までの授業では、自信がなくても一応答えの根拠と言える部分があったんだと思う。
雄悟くんの表情を伺うと、能面をくっつけたような無表情。
いつも勉強を教えてくれる時は真剣な表情だけど、それとは違う。
怒ってるのかも……すごい、怖い……。
「はぁ……」
雄悟くんがため息をつく。
「……南」
雄悟くんの低い声に、何も言えなくなる。