おしえてください、先生。
生徒は男嫌い side 雄悟
あー、くそ。やっちまった……。
南、きっと嫌だったよな……。
頬だとしても、キスなんて……。
南の家からの帰り道、歩きながら頭を乱暴に掻く。
しかも、やり逃げみたいに出てきてしまった。
ヤバいよな……。
はあ、と大きなため息をつく。
こんなつもりじゃ、なかったんだけどな……。
俺の家は、物心ついた頃から母子家庭だった。
父親の顔は、見たこともない。
経済的に豊かだとはお世辞にも言えず、俺は高校に進学すると同時にアルバイトを始めた。
俺の通う明英高校は進学校で、アルバイトは禁止されていた。
だけど、教材費にスマホ代、食費に学費、その他諸々。高校生は、金がかかる。
バイトしないわけには、いかなかった。
俺はスーパーの中に併設されたパン屋さんでバイトを始めた。
顔は目元以外隠れているから、アルバイトしているのが俺だとバレにくい。
売れ残ったパンももらえるし、一石二鳥のバイト先だった。
そして、そこで出会ったのが桜さんだった。