おしえてください、先生。

「いや、まあ。うん。ちょっとな」

「今日もカテキョ?」

「あー、うん」

「何、カテキョ嫌なの?」



嫌とか、そういうことじゃなくて……。

頬にキスしました、なんて言えねえ……。



「カテキョの子、めっちゃかわいいんでしょ? 何が嫌なの」

「嫌とかじゃねーって」



むしろ、嫌だったのは南の方だろう。

嫌いな男にキスなんかされて……男嫌いに拍車がかかってたら俺、どう責任取ればいいんだ……。

つーか、男ってだけで嫌われてんのに、もっと嫌われてたらどうすんだよ……。

目とかもう、一生合わせてくんねえかも……。

それだけならまだいい。もう家の中すら入れてもらえないかもしれねえ。

いや、もしかしたら桜さんに言い付けて、下手したら訴えられるんじゃ……。



そこまで考えて、ゾッとした。

とりあえず今日謝ろう……。

もし家に入れてくれなくても、インターホン越しに謝ろう……。

俺が決意を固めた頃、窓の外はポツポツと雨が降り始めていた。
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