おしえてください、先生。

怖くて怖くて、スクール鞄をぎゅっと抱きしめる。



どうしよう……まだバス、乗ったばかりなのに……っ。

あと30分はあるよ……っ!



目尻に涙が浮かぶ。



こんなことなら、お母さんに怒られてでも次のバスに乗ればよかった……!

振り向くのも怖いし、こんなに人がいたら誰がやってるかなんてわかんないよ……っ。



おしりを触る感触に怯えながら俯いていると、男の人たちの間から一本の腕が伸びてきた。

え?と驚いている間に私の腕をそれに掴まれ、引っ張られる。

強い力に引き寄せられ、男の人から抜け出した先には制服を着た男の人がいた。



また男の人……!と思ったけど、多分この人……助けてくれた……?

そう思って、男の人を見上げる。

そこにいたのは、中性的な顔をした男の人だった。



綺麗な人……。

アーモンド型の目から覗く茶色の瞳、筋の通った鼻、薄い唇……。

眉毛は男の人らしくキリッとしているけど、まつ毛がすごく長くて、とても綺麗。
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