おしえてください、先生。

引っ越しのとき、間違えてお父さんのものがいくつか混じってしまったみたいで、それ以来ここにお父さんのものがしまわれていたのだ。

他にもシャツや新品の靴下なんかもある。

スウェットとパンツを手に、部屋を出る。



「これ、お父さんのだけど……使ってください」



雄悟先生の姿を見て、ハッとする。

先生は相変わらず腰にタオルを巻いた上半身裸姿だ。

パッと目をそらす。



「ごめんなさい。先生、寒いよね……」



もっと、気を遣うべきだった。

自分のことでいっぱいいっぱいで、私、かっこ悪い。

気も遣えない、酷いやつだと思われたかも……。



「や、大丈夫。お前をあんまり一人にするのも心配だし」



そう言って雄悟先生は受け取ったものをその場ではき始めた。

私は慌てて背を向けて、先生が着替え終わるのを待つ。



もう、なんで目の前で着替え始めるの?!

前言撤回、雄悟先生も全然気を遣えてないし、乙女心を全然わかってない!

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