おしえてください、先生。
立てるか聞いても、顔を横に振るだけ。
動けない、という意思表示だ。
だけど、こんなところでいつまでも雨に打たれているわけにも行かない。
雷だって、またいつ鳴るかわかんねえ。
「南……、嫌だと思うけど……触るぞ?」
南に触れたのは、昨日の頬へのキスが久しぶりだった。
あとは、バスで痴漢を助けた時だけ。
南が嫌だろうから、俺から触れることはしないようにしてきたつもり。
キスは……しちまったけど。
それに、ずっとここにいるわけにはいかない。
南の腕を掴む。
白くて柔い、細い腕。強く握ると、すぐ折れてしまいそうだ。
南は小さく悲鳴を上げた。
だけど気にすることなく掴んだ腕を引っ張って、体を起こしてから南の膝下と背中に腕を回し、お姫様抱っこをする。
「ゆ、雄悟先生っ」
慌てたように南がそう言ってすぐ、雷が鳴った。
――ピカッ
「きゃっ」
――ゴロゴロゴロ
南が悲鳴を上げて、俺の首に手を回す。
抱きつかれたような形になった――これがら初めて南から俺に触れた瞬間だった。