おしえてください、先生。

自宅のあるマンションまで走った。

お父さんとお母さんが離婚してからお母さんと二人で住んでるマンションは、6階建て。

そこの3階の角部屋が、私とお母さんのお城だ。

少し古いけど、2LDKで私の部屋もある。結構気に入ってる。

玄関の扉を開けると、お母さんがリビングから顔を覗かせた。



「南、遅かったわね。もう雄悟くん、着きそうだって」



雄悟くんというのは、今日から来る家庭教師の先生のこと。

お母さんの知り合いで、私も勝手にそう呼んでいる。



「ご……ごめん、学校出るの、ちょっと遅くなったの」



嘘はついていない。委員会の仕事があって遅くなってしまったのは事実だ。



「そう。じゃあ慌てて帰ってきたんじゃない?大丈夫だった?」

「う、うん……」



ここでいう大丈夫、というのは痴漢にあわなかったか、という意味だ。

お母さんは私が痴漢にあいやすいことを知っていて、普段はあまり帰りを急かしたりしない。

今日は雄悟くんが来るから、ちょっと急かされたけど。
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