おしえてください、先生。
駅の改札を抜けると金森くんの姿があって、手を挙げて「よっ」と声をかけてくる。
まるで待ち合わせしているみたいだ。してないのに。
「なー南ー。今日こそ連絡先教えろよー」
「…………」
私は無視して早歩きで進む。
それでも話しかけながら金森くんはついてくる。
怖くて、震える足で懸命に進む。
走ることはできない。
震える足で走ったら、多分転んでしまう。
バスの停留所へ向かう途中にあるクリスマスツリーを横切ろうとした時、痺れを切らした金森くんが私の腕を掴んだ。
「やっ」
「いー加減無視すんのやめろよ!」
ぎゅっと掴まれた腕が痛い。
怒鳴り声が頭に響いて、警報が鳴る。
ダメ。体が震える。
怖い……!!
「は、はな……、はなして……っ」
ギュッと目を瞑る。
怖くて苦しい現実から目を背けた。
「そんな怖がることねーだろ? 昔みてーに仲良くしてーだけだって」