おしえてください、先生。

泣きそうだった。

お母さんが好きだって、雄悟先生の口から聞くのが怖かった。

キスなんてなんでもないって、お前のことなんてなんとも思ってないって言われるのが怖かった。



苦しい、悲しい。

目頭がどんどん熱くなる。



どうして、助けてくれたの。

どうして、キスしたの。

どうして、お母さんのことが好きなの。

どうして……、先生の好きな人が私じゃないの……。



先生がお母さんを好きだと知ってから、ずっと苦しかった。

ずっとずっと、辛かった。

こんな気持ちになるなら、知らなくて良かった。

先生への気持ちに、気づきたくなかった。



「ちょっと待て、南。お母さんって、桜さん?」

「それ以外、誰がいるの……」

「俺が?桜さんのことを?好き?」



頷いてみせる。

確かにこの耳で聞いた。

雄悟先生が、お母さんに「好きです」って言ってるの……。



「なんでそんなことになってんだよ……」

「だって……」

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