性別≠不一致

「折角だし、竜司くんがカットしてよ」


「……へい?」


言葉の意味が理解できなくて、頭の中で何度も千秋の発言を繰り返した。


竜司くんがカットしてよ?


いやいやいや、無理っすよ無理。


だって俺雑用だもん。まだハサミ握らせてもらえてねえもん。


一度仲の良いお客が「竜司にカットをお願いしようかな」と言ってくれたが、店長がGOサインを出してくれなかった。


それだけこの世界は厳しいのだ。職人の道は険しい。


というわけで、


「おことわります」


全力で拒否る。まだ俺はそのレベルまで達していないのだ。


「いいじゃん別に。可笑しくなっても俺気にしないし」
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