性別≠不一致

約束と言っても凄く簡単な事だ。


小説家であちこちに取材をしているだろうゴウさんなら、この手の約束など朝飯前のはずだ。


「俺が女だってこと、他の皆には言わないでください」


俺の秘密を胸の内に閉まっていてほしい。ただそれだけ。


「別にかまわへんけど……マミもマスターも偏見なんて持ってへんぞ」


ゴウさんは続けて「寧ろマミは大好物や」とよくわからないフォローを入れたけど、俺は首を左右に振った。


「俺が嫌なんです。偏見がなかったとしても、やっぱりこのまま男として接して欲しいし接したいんです。わがままでごめんなさい」


沈黙が流れる。


ゴウさんが何を思っているのかはわからない。


俺なんかよりずっと大人だし、小説家として立派に自立している人だから、俺みたいな一般人には考えが及ばないことを考えているのかも知れない。


だから俺も黙ったまま、ゴウさんの言葉を待つ。
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