性別≠不一致
俺はそんな生き地獄を、中高六年間味わらなければならない。
傍から見れば、それが正しい姿だろう。
でも俺は、誰も知らぬ所で毎日毎日苦痛でしかない辱めを受けるのだ。
家の家計を考えれば、私立中学に進学するなど堪ったものではない。
上の兄達は全員公立の中高に通っていたが、それでも家計は火の車。俺だけ特別扱いすることなど出来ないことはわかっていた。
それでも、両親を説得した。
もちろん制服で選んだなど言えない。俺は本当は男の子で、身体と心の性別が一致していないだなんて、口が裂けても言えるわけがない。
だから「将来獣医になりたいから、今から私立の中学に通って勉強したい」と、もっともらしい理由をつけたのだった。
系列の大学にそういった学科があり、そこに眼を付けて交渉の材料にしたわけだ。
獣医になりたいという夢は本当だ。
生き物が好きで、当時の俺は動物に関わる仕事につきたいと思っていた。