性別≠不一致

でもしょうがないじゃないか。男としてのプライドさえも失ったら、俺には何も残らないのだから。


それに所詮叶わぬ恋。


誰が見たってわかる単純な問題だ。打算も戦略も必要ないほどの、単純な方程式。


男である竜司くんが、男にも女にも慣れない中途半端な俺を好きになってくれるわけがない。


結局俺が今できる最善の策は、竜司くんの冗談を真に受けることなく、このまま男友達として接することだけ。


わかっちゃいるけどさ。一体何がしたいんだろ俺。


無意識に溜息がこぼれる。これじゃあ俺の身体には、幸せのしの字も残っちゃいないだろう。


「……なんで好きになったんだろ」


ポツリと呟いた独り言に、誰も答えは教えてくれない。


第三者がわかるわけもなく、俺自身も明確な理由は見えていない。


ぼんやりとした霧の中で、そこにあるのかさえ分からない物を手探りで探している感覚。

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