性別≠不一致

どんなに好きでも、相手はそれに答えてくれない。


声(女)を捨てた人間に、相手は興味を持ってくれない。


やっぱり、俺って人間として失敗作なのかな。


男にも慣れ切れず、女にも慣れ切れず。


中途半端なフラットな状態で、その場凌ぎで生きて行くしかない人間。


「どこで間違っちゃたのかなぁ……」


「間違ったっていいじゃないですか」


マスターはカップを磨きながらも、優しい眼差しで俺を見つめ語りかける。


「間違えが許されるのは若者だけの特権ですよ。間違えて成長して、それを糧に人生というのは積み重なる。私はそう思ってます」


「そうかも知れないですけど……」


このままじゃいけないとはわかっているつもりだ。


でも、この関係を崩したくないという気持ちの方が勝っている。

< 140 / 281 >

この作品をシェア

pagetop