性別≠不一致
どんなに好きでも、相手はそれに答えてくれない。
声(女)を捨てた人間に、相手は興味を持ってくれない。
やっぱり、俺って人間として失敗作なのかな。
男にも慣れ切れず、女にも慣れ切れず。
中途半端なフラットな状態で、その場凌ぎで生きて行くしかない人間。
「どこで間違っちゃたのかなぁ……」
「間違ったっていいじゃないですか」
マスターはカップを磨きながらも、優しい眼差しで俺を見つめ語りかける。
「間違えが許されるのは若者だけの特権ですよ。間違えて成長して、それを糧に人生というのは積み重なる。私はそう思ってます」
「そうかも知れないですけど……」
このままじゃいけないとはわかっているつもりだ。
でも、この関係を崩したくないという気持ちの方が勝っている。