性別≠不一致
出逢い
きっかけは落としたパスモ。
プラットホームの階段を下っていると、突如後ろから声をかけられた。
最初は自分に向けられたものではないと思い無視していたが、背後から肩を叩かれ、そこでやっと俺にかけられた言葉だと気づいた。
顔だけ振り向くと、そこにいたのは人の良さそうな青年。
初めて見る人物。
なにか気に障るようなことでもしたのかと思考を巡らすと、彼の右手にパスモが握られているのを発見した。
右端が少し折れ曲がり、セロハンテープで補修した小汚いそれは、まぎれもなく俺のものだった。
以前サイフに入れたまま改札口を通ろうとしたら、何故か反応せず渋滞を作ってしまった経緯があったため、それ以来ポケットにしまって出し入れしていたのだが……。
どうやら何かしらの拍子で落としてしまったらしい。
「これ、君のだよな?」
「あ、ありがとうございます」