性別≠不一致
一途
「かれ……し……?」
眉間に皺を寄せて端正な顔立ちを崩しながら、目の前の男は手にしていたカップのアイスクリームをテーブルに落とした。
二限目終わりの学食はまだ人がまばらで、キッチンの奥では給仕のおばさん達が昼時の戦に備えてせっせと下ごしらえを頑張っている。
同じ授業を履修していた同士を学食まで半ば無理やり連行し、小さなテーブルに向い合いながら座らせ、俺はカミングアウトをかましたのだ。
やっぱ驚くか。そりゃそうか。
だけどここまでショックを受けるとは思っていなかったら俺は、威圧感たっぷりの眼差しを真正面から受け止めきれず、テーブルに落ちた食べかけのアイスクリームに視線を向けていた。
「なんで? だってお前男じゃん。一応」
周囲に人はいないけど、ヒソヒソ声で太一は喋る。
俺の秘密を知る数少ない友人の一人である太一は、怪訝な表情を浮かべていた。
それは単純な疑問だけでなく、かなりの割合で嫌悪感が交じっている。
いや、殺意? 対象が俺にではなく、俺の“彼氏”に対してのものだけど。