性別≠不一致
再開
なんとなくだった。
理由らしい理由なんてない。なんとなく、いつもと違う帰り道を歩いていた。
ただ道を一本ズラしただけ。景色も対して変わり映えしない。
県庁所在市ギリギリのこの区は、地元人からしたら田舎と呼ばれる所らしい。
ビルやショッピングモールなどはなく、一軒家と自営業の店が立ち並び、近くには海に繋がる一級河川が流れている。
生活するには全く不自由しない所だが、少し物足りない感はある。
それでもゆったりと流れるこの雰囲気は好きだ。
なにより人口密度が低いので騒がしくない。夜もグッスリ眠れる。
時間は午後四時。昼飯を早めに取ったせいか、少し小腹が空いてくる。
コンビニとかでパンでも買おうかと辺りを散策していると、ある店に視線を奪われた。
いや、正確には喫茶店ではなく、店の前に立つ人物に。
スピカと書かれた看板がかけられた小さな喫茶店。