性別≠不一致
古びた感じの歴史ある趣き。その店先にエプロンをかけた青年が、プカプカとタバコをふかしていた。
見覚えがある風貌。というか、よく覚えている顔つき。
俺の視線を感じ取ったのか、タバコを口に咥えたまま青年がこちらに振り向く。
目と目が合う。数秒の沈黙。
「パスモの兄ちゃん!」
いきなり叫ぶから、口からタバコが零れ落ちた。もったいないし環境にも悪い。
けれど彼はそんなことなどお構いなしに、俺の側に近づくと両肩を掴んで前後に揺さぶった。
「まさか会えるなんて思ってなかったよ。今暇? とりあえず店入ってよ」
回答なんて待たずに、彼は半ば無理やり俺を喫茶店に連れ込んだ。
ちなみに俺の頭はこんがらがって混乱中。
だってあの人は三つ先の駅に降りると言っていた。最寄駅はここではない。
なのになぜここにいる?