性別≠不一致

エプロン姿だし、彼がここで働いているのは誰でもわかる。でもなぜここで働いているのかがわからない。


ていうかタバコポイ捨てなんですけど。店の前に。


カランとベルと鳴ると、カウンターの奥に座る老父がこちらを向いた。


眼鏡をかけた白髪の老父は、人の良さそうな笑みを送る。


「竜司くんのお友達ですか?」


「例の子。まあとりあえず座って」


カウンターの椅子に無理やり座らされた。


例の子ってなんだ?


彼の言葉が気になったが、とりあえずざっと店内を見回してみる。


木目調のカウンターテーブルに、こちらも木目調の丸テーブルが三つ。


昔懐かしい雰囲気。壁に吊るされたハト時計がより昭和チックを醸し出す。


カウンターの奥は厨房になっているようで、小さなコンロに電子レンジや料理器具が置いてあり、BGMはどこかで聞いたことがあるジャズが流れている。
< 23 / 281 >

この作品をシェア

pagetop