性別≠不一致
エプロン姿だし、彼がここで働いているのは誰でもわかる。でもなぜここで働いているのかがわからない。
ていうかタバコポイ捨てなんですけど。店の前に。
カランとベルと鳴ると、カウンターの奥に座る老父がこちらを向いた。
眼鏡をかけた白髪の老父は、人の良さそうな笑みを送る。
「竜司くんのお友達ですか?」
「例の子。まあとりあえず座って」
カウンターの椅子に無理やり座らされた。
例の子ってなんだ?
彼の言葉が気になったが、とりあえずざっと店内を見回してみる。
木目調のカウンターテーブルに、こちらも木目調の丸テーブルが三つ。
昔懐かしい雰囲気。壁に吊るされたハト時計がより昭和チックを醸し出す。
カウンターの奥は厨房になっているようで、小さなコンロに電子レンジや料理器具が置いてあり、BGMはどこかで聞いたことがあるジャズが流れている。