性別≠不一致
店内は俺とマスターっぽいおじいさんと例の彼。完全にアウェーだなこれ。
竜司くんと呼ばれた青年は俺の隣に腰掛けて、こちらに向き直る。
「あん時は助かったよ。実は手持ちほとんどなくてさ、あれがなかったら始発までトイレの個室で過ごすとこだったぜ。ほんとありがとな」
「いえ、お礼の言うのはこちらの方です」
元はといえば俺がパスモを落としたのが原因なわけだし、あれくらいはして当然だと思う。
「とりあえず何か飲めよ。俺が奢るから」
「え、いいですよそんな」
「マスター、コーヒー二つ!」
人の話を聞いてください。
マスターはニコニコしながら厨房へ歩いて行く。
なんかどんどん深みに嵌ってく。見ず知らずの人にこんなに良くしてもらって、なんか罰が当たりそうだ。
「でもまさか会えるとわなぁ。大学生? 名前は?」