性別≠不一致

堪らず悪態をついてしまいそうになったが、なにやら言いそうな雰囲気だったので大人しく口をつぐんだ。


「その……あー……カッコイイところ?」


「はぁ?」


我慢出来ずに毒素が強い一言を発してしまったが、誰だってこんなこと言われたら「はぁ?」と口に出してしまうはずだ。


カッコイイって俺が?


それって男に対して使う言葉で、女の俺に使う言葉じゃねえだろ。


まして太一とは幼い頃からの腐れ縁で、初対面から現在に至るまで一度もたりとも俺を男として見てはいない。


だから俺に対して“カッコイイ”という感情が湧くはずなどありえないのだ。


「なにそれ意味不明」


「だ、だからっ……! お前昔っからクールで大人びてたから、なんか憧れてて。あんな風に俺も格好良くなりたいと思ってたら、いつの間にか憧れが恋愛感情にというか……」


最後の方はゴニョゴニョとなにを言ったのか聞きとれなかったが、こいつはかなりの大馬鹿野郎ということだけはハッキリした。
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