性別≠不一致

「千秋って言います。すぐそこの大学の三年ですけど、竜司さんも学生ですか?」


「俺は一応社会人。ピチピチの26歳で、こう見えて美容師の卵やってんだ。そこの駅前の店で働いてる」


26って、俺の六つ上じゃないか。同じくらいだと思ってた。


てことは、俺は六つも年上の社会人に二千円を無理やり手渡したということになるのか?


なにやってんだ俺。こんな若造に金の心配されるとか、相当な屈辱だっただろう。


ガンジーだって助走をつけて殴りかかって来るレベルだ。


「……あれ? 社会人なのにバイトしていいんですか?」


「あー……社会人っつっても見習いだからさ。ほとんど収入なんてないし、実質バイト扱いだから、こうして稼がないと生きていけないわけよ」


苦笑いを浮かべながら、彼は言う。


「んで、丁度この店がバイトを募集してて、店からも近いし都合も良いかなぁっと思って働いたわけ」


なるほど、少しだけ謎が解けた。
< 25 / 281 >

この作品をシェア

pagetop