性別≠不一致
でも美容師か。ちょっと意外。
美容師って髪を染めたり長髪だったりと勝手なイメージがあったけど、彼は黒髪短髪の爽やかな印象で、俺の思っている美容師像とは対極の存在だ。
後ちょっと童顔? クシャッて笑うから余計幼く見える。
「竜司さんって若く見えますね。俺とタメかと思いました」
「まじ? でもこの歳になるとちょっと複雑だなぁ……」
「そういうもんなんですか?」
「そういうもんだって。後、俺のこと呼び捨てでいいから」
そう言ってくれるけど、ほぼ初対面で面識もないに等しい人物に、しかも六つも年上の人に呼び捨ては言いづらい。
とりあえず苦笑してその場を誤魔化すと、香ばしい香りが漂ってきた。
「どうぞ」
カウンターに置かれた二つのコーヒーカップ。
マスターにお礼を言うと、その内一つのカップを掴んで、コーヒーを口にした。