性別≠不一致

千秋がレポートに忙しくて構ってくれないと、ガキみたいに拗ねて無視しちまったり。


千秋が俺の知らない男と一緒にいるだけで、ムシャクシャして当てつけに馬鹿なことをやっちまったり。


千秋の何気ない言動に振り回されて、勝手に暴走して、後で凄い自己嫌悪に陥るくらい、俺は千秋のことを想ってるんだ。


浮気の言いわけといわれたらそれでお終いだけど、それでもこの気持ちに嘘偽りはない。


絶対にない!


店番なんてしている場合じゃないんだ。


エプロンを脱ぎ捨て、クビになる覚悟で『スピカ』を飛び出す。


外に出た瞬間、店の入り口で大学に行っていたマミさんとはち合わせた。


眉間に深い皺を刻み、唇を噛みしめているマミさんは、何も言わず俺の頬を張り倒した。


問答無用の本気の張り手。いつぞやの日を思い出す。


「さっきちーちゃんとすれ違ったけど、あんた一体なにしたのよ」


静かに、しかし怒気が籠った声色でマミさんは喋る。
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