性別≠不一致
竜司くんは照れ臭そうに頭の後ろを掻きながら、視線は数キロ先の大きな船に向けていた。
「良い歳してイチャイチャしたいっていうか。キスだって毎日したいっていうか……その、なんだ? なんつうか、千秋はうぜぇって思うかもしんねえけど、俺って言葉とか身体で愛情表現をしないと凄く不安になるタイプなんだ」
竜司くんは続ける。
「でも千秋はどっちかというと淡白っつうか、心と心の繋がりがあればいいっていうタイプというか。だから俺もそれでいいかなって。千秋が満足してるなら、それでいいかなって思ってたけど……」
全神経を身体の右半分に集中させていたからか、竜司くんの動きを感じ取ったのは早かった。
だけど身動き一つ出来ず、俺は竜司くんに抱きすくめられていた。
背中に回された腕は強くて、でもどこか優しくて。
初めて竜司くんの胸の中にいると思うと赤面してしまいそうになるが、タバコに混じった竜司くんの匂いを感じると、不思議と気持ちは落ち着いていった。
「ごめん、もう限界」
耳元で囁かれた甘い言葉は、俺の強固な意志を簡単に緩ませる。