性別≠不一致

そんなこと言われたら期待してしまう。もしかしたらって思ってしまう。


自惚れるな。確信するな。


竜司くんの言葉は、まだ続いてるんだ。


「あの夜、千秋が押し倒されてるとこ見て、すげぇ嫉妬したんだ。俺が大事にしてきたのに、見ず知らずの男が千秋の身体に触れてるし、千秋も全然嫌がる素振り見せねぇし。
なんか千秋を盗られたような気がして、千秋に捨てられたような気がして……」


ギュッとさらに抱き寄せられて、竜司くんの熱をより一層全身で感じる。


ドクドクと忙しない心音は、一体どちらのものだろう?


うるさいけど、悪い気はしない。


温かくて心地いい。タバコの匂いはやっぱり慣れないけど、それでも竜司くんの匂いだと思えば嫌な気分はしなかった。


「ごめん。言いわけにしか聞こえないよな」


きっと首筋にある痣のことを言っているんだろう。


言いわけも誤魔化しもないストレートな言葉に、少なからず胸の奥がチクリと痛んだ。
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