性別≠不一致

「ッ!? 待って……!」


竜司くんのことを、信じようとしているから。


スッと身体を離そうとする竜司くんの腕を掴んで、頭の中で言葉を整理する。


緊張で口の中に溜まった唾液を呑み込んで、意を決して顔を見上げた。


「俺……全然淡白じゃない」


「千秋?」


「竜司くんの匂い好きだし、こうして抱きしめられたかったし、キスだってほんとはもっとしたいって思ってる」


折角頭の中で整理したのに、出てくる物はまるで欲求不満だと暴露するような言葉達。


俺が言いたいのはそういうことじゃなくて。もっと根源的な問題で。


「恐かったんだ。竜司くんは俺を俺として見てくれてるけど、でも自分の中で沸き立つ感情は女のそれで。
触れてほしいとか、そういうこと思う自分が気持ち悪くて。やっぱ女なんだと思って。
女であることを否定して生きてきたのに、今度は男であることを否定してしまったら、俺ん中でなにもなくなっちゃうような気がして……」


なにやってんだ俺。言ってること支離滅裂で意味不明じゃないか。
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