性別≠不一致
上手い言葉が見つからない。この感情をどう表現すればいいのかわからない。
殺伐とした不安と恐怖を言い表すのがこんなにも難しいものだったのかと、今更ながら理解する。
徐々に視線が下がり俯くと、竜司くんの手が俺の手に重なるように置かれ、優しく包み込んだ。
「千秋は千秋じゃんか」
冷たい掌。
だけど頭上から降り注ぐ声はとても温かで、言葉の渦に飲み込まれた思考を優しく引き上げてくれた。
「男だろうと女だろうと、千秋は千秋だろ? 男の千秋も女の千秋も、千秋という人間があってこそ生まれるもんじゃんか。
千秋は千秋。なにもなくなるなんて、そんな寂しいこと言うなよ」
竜司くんは微笑みながら、空いている手を俺の頬に添えた。
「俺は千秋の全てに惚れてんだから」