性別≠不一致

「でも他の女と寝た」


「うっ……」


「俺の言葉信じなかった」


「あーと……」


「すぐ追いかけてこなかった」


「それは……」


口の右端が不器用に釣り上がって、苦笑を浮かべる竜司くんの視線が上下左右に忙しなく泳いでいる。


やっぱ俺って嫌な奴だ。


照れ臭いからって竜司くんの弱みにまんまと付け込んで、俺達の間に流れるこの甘酸っぱい青春オーラを強引に掻き消そうとしているのだから。


「俺は俺、か」


それでも、俺の苦悩が消えるわけじゃない。


言葉ではわかっていても、こういう問題は感覚的な物で、はいそうですかと納得できない。
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